飛鳥の明日香の里を(明日香村)/散策スポット/益田岩船
ますだのいわふね
竹林の奥に横たわる巨石。何のために造られたのか分かっていない。
明日香村の西、橿原市の丘の上に、加工された巨大な花崗岩が横たわっています。周囲は竹林で、坂を上りきるまで姿は見えません。木立のあいだから現れる大きさに、まず驚かされます。
大きさは東西約11メートル、南北約8メートル、高さ約4.7メートル。重さは800トンほどと見積もられています。飛鳥に残る石造物のなかで最大級のものです。
上の面は平らに削られ、そこに一辺約1.6メートル、深さ約1.3メートルの四角い穴が2つ、1.4メートルほどの間隔をあけて並んでいます。
側面には、格子のように整然と刻まれた溝が残っています。石を削り出していく途中の加工跡で、仕上げまで至っていないことが見てとれます。近くに立って見上げると、ノミを入れた幅がそのまま並んでいるのが分かります。
用途は分かっていません。古くからいくつもの説が出されてきました。
有力とされているのは、古墳の石槨(せきかく)を造ろうとして途中でやめたもの、という見方です。2つの穴を2つの墓室とみると、牽牛子塚古墳の石槨とよく似た構造になります。作業の途中で石に亀裂が入り、放棄されたのではないかと考えられています。
ほかに、天体を観測するための台だったとする説、物見台とする説、火葬した骨を納める墓だったとする説などもあります。どれも決め手を欠いたままです。
名前は、平安時代にこの近くに築かれた灌漑用のため池「益田池」に由来します。池の堤に立てられた石碑の台石だった、という言い伝えから、益田の岩船と呼ばれるようになりました。
ただしこの伝承も確かめられてはいません。名前だけが残り、石そのものの目的は分からない。飛鳥の石造物にはこうしたものが多くありますが、この大きさで用途が不明というのは際立っています。
明日香村の外、橿原市白橿町にあります。近鉄岡寺駅から徒歩約20分。住宅地の奥から山道に入り、竹林のなかを上ります。
道は細く、雨のあとはすべりやすくなります。歩きやすい靴で行ってください。まわりに照明はないので、日のあるうちに。
竹林に射す光の加減で石の表情が変わります。人の少ない場所なので、巨石と向き合う時間が取れます。
公開日 /更新日