かめいし
愛嬌のある顔で親しまれる、明日香を代表する石造物。
川原の集落のはずれ、道端に据えられた花崗岩の石造物です。長さ約3.6メートル、幅約2.1メートル、高さ約1.8メートル。
丸みを帯びた体に、前へ突き出した顔。目と口が彫られ、たしかに亀がうずくまっているように見えます。飛鳥の石造物のなかでも、とりわけ愛嬌のある姿で知られています。
いつ、誰が、何のために造ったのかは分かっていません。
川原寺の境界を示す石とする説、庭園や祭祀の場に据えられていたとする説などがありますが、決め手はありません。飛鳥時代のものと考えられていますが、それすら確実ではありません。
石の下部は地中に埋まっており、全体の形も分かっていません。
この石には言い伝えがあります。
昔、大和と河内のあいだで水争いが起きた。争いに負けた大和側の湖の水が干上がり、湖に住んでいた亀がみな死んでしまった。それを哀れんだ村人が、亀の形を石に刻んで供養した——というものです。
もうひとつ、よく知られた言い伝えがあります。
この亀は、はじめ北を向いていた。それが東を向き、いまは南西を向いている。もしぐるりと回って真西を向いたとき、大和国一帯は泥の海に沈む——という話です。
西は、水争いに勝ったとされる當麻(たいま)の方角にあたります。石が少しずつ向きを変えているという発想そのものが、この石が長いあいだ人々に見つめられてきた証でもあります。
近鉄飛鳥駅から徒歩約20分。道路のすぐ脇にあり、柵もなく、いつでも見られます。見学は無料です。
すぐ近くに川原寺跡と橘寺があり、あわせて歩けます。周囲は田で、季節ごとに背景が変わります。
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