あさかぜとうげ
稲渕の棚田を見下ろす峠。竹やぶのあいだを抜ける細い道。
明日香村の南、阪田と稲渕のあいだにある峠です。標高はおよそ200メートル。高松塚古墳のある平田の丘から東へ、飛鳥川の谷へ下りていく途中にあたります。
道は細く、途中から舗装が切れて土になります。両側は竹やぶと丈の高い草で、視界が一度閉じる。その先で不意に開けて、谷と山並みが正面に見えます。
看板も柵もありません。峠だと気づかずに通り過ぎてしまう人もいる場所です。
この峠がよく知られているのは、稲渕の棚田を見下ろせるからです。
峠から東へ下ると、南向きの斜面いっぱいに段々の田が広がります。谷の底を飛鳥川が流れ、対岸には集落と山。棚田を撮る人の多くが、この高さから構えます。
9月の下旬には、田のあぜを彼岸花が赤く縁どります。同じころ棚田では案山子コンテストが開かれ、道沿いに案山子が並びます。峠から下って棚田へ入り、飛鳥川まで歩くというのが、この時期のよくある道筋です。
この道は、飛鳥の中心から南西へ抜ける道筋にあたります。檜隈や真弓の丘を越え、高取から吉野の方へ向かう人が通った道です。
いまは軽自動車がようやく通れるかどうかという幅ですが、峠の名が残り、道が残っている。飛鳥に人が住み続けてきたということは、こういう道が使われ続けてきたということでもあります。
近鉄飛鳥駅から徒歩約40分。高松塚古墳・中尾山古墳から東へ坂を上がっていくと峠に出ます。石舞台古墳の側から来る場合は、稲渕の棚田を上がってくる形になります。
歩くなら、飛鳥駅から高松塚・中尾山を見て峠へ上がり、棚田へ下って飛鳥川の飛び石に出る順が歩きやすい道のりです。下り方向になります。
街灯はありません。日が落ちると足元がまったく見えなくなるので、明るいうちに抜けてください。夏場は草が道にせり出します。
峠までの道も、峠から下る道も、生活道路であり農道です。車を停める場所はありません。歩いて越えるための峠だと思ってください。
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