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棚田いっぱいの「クスッ」 ― 第31回 案山子コンテスト

公開日

2026年の案山子コンテストのテーマは「クスッ」。世界遺産に登録された村が、あえて笑いを選びました。9月26日・27日には案山子まつりが開かれます。

9月下旬の稲渕棚田を歩くと、道の先に赤い塊が立っています。

ずんぐりした楕円がいくつも連なって輪をつくり、そのひとつひとつに白目と青い瞳が描かれています。生き物のようでもあり、装飾品のようでもあります。

棚田の農道に立つ赤いオブジェ。白目と青い瞳を描いた楕円が連なって輪をつくっている
2025年のジャンボ案山子の顔。体は外され、顔だけが残されている

足元の説明板に、正体が書いてありました。

「2025年のジャンボ案山子が好評でしたので顔部分を延長して展示します。写真を撮って行ってください」

昨年のジャンボ案山子は、大阪・関西万博のみゃくみゃくでした。青い体に、赤い細胞のような輪。その顔の部分だけが、年を越して棚田に残されているのです。

説明板には、こう書き足されていました。

「観光客の皆様は知らないでしょうが、シッポも作っていたのですよ(笑)」

誰も気づかないところまで作り込んで、あとから自分で明かす。稲渕の案山子づくりの空気が、この一文に出ています。

今年のテーマは「クスッ」

稲渕棚田の案山子コンテストは、今年で第31回になります。

テーマは「クスッ」。副題は「ユーモアと遊び心あふれるおもしろ案山子」です。

ポスターには、このテーマを選んだ理由が書かれていました。

「『世界遺産』に登録された誇り高い明日香村だからこそ、私たちは『笑い』でこの場所をいっぱいにしたいと思いました」

世界遺産という言葉は、どうしても背筋を伸ばさせます。その村が、あえて「クスッ」を選びました。

棚田のそばに立つ灰色の大仏の案山子。奥には「祝 世界遺産登録」の幟を掲げたジャンボ案山子
手前が「石舞台に一度座ってみたかった(飛鳥大仏)」、奥が今年のジャンボ案山子

今年のジャンボ案山子は、「祝 世界遺産登録」の幟を掲げて棚田の一角に立っています。

作品名を読むだけで、だいたい笑える

棚田の入口には、今年の出品作を並べた掲示板があります。題名だけ拾ってみます。

1「明日香の無給イケメン」、2「笑ゥ蔵王権現」、3「宇宙人も食べてみたい 棚田のお米」、4「さんま三昧 大爆笑」、7「クスッと笑える ちゃんこ鍋」、8「これって金?」、9「亀形木造物」、11「風神 雷神(俵屋宗達の屏風絵)」、13「みんなで出航!! せせらぎ海賊船」、14「石舞台に一度座ってみたかった(飛鳥大仏)」。

現地に立つと、題名の意味が立ち上がってきます。

農道の両側に並ぶ案山子。紫の衣をまとった人物や、麦わら帽子に赤いチェックシャツの案山子が立つ
道の両側に作品が並ぶ。右が「明日香の無給イケメン」

「明日香の無給イケメン」は、麦わら帽子に赤いチェックシャツという、絵に描いたような案山子でした。田を見張る仕事を、報酬なしで何十年も続けてきた存在。それをイケメンと呼びます。

「石舞台に一度座ってみたかった(飛鳥大仏)」は、灰色の大仏が台座を離れて道端に立っていました。村の名所に対する、率直すぎる願望です。

刈り取りの終わった田のへりに座る三体の案山子。アクセサリーを囲み、吹き出しが添えられている
8「これって金?」。吹き出しの掛け合いがそのまま題名になっている

「これって金?」は、刈り取りの終わった田のへりに三体。二人がアクセサリーらしきものを囲み、吹き出しが並びます。「わたしのは?」「これって、きんかなー」「ぼくのは きんだぁー」。後ろでは麦わら帽子の一体が、我関せずという顔で棒を立てています。

鍋のなかに浸かった力士の案山子。頭上に手描きの傘がさしかけられている
7「クスッと笑える ちゃんこ鍋」。傘には「ちゃんこ傘」と書かれている

「クスッと笑える ちゃんこ鍋」は、鍋のなかに力士が浸かっています。頭上には手描きの「ちゃんこ傘」がさしかけてありました。

案山子まつり2026

展示にあわせて、9月26日(土)・27日(日)に「稲渕棚田 案山子まつり2026」が開かれます。時間は9時から15時まで、会場は稲渕棚田です。

産地直送の野菜、棚田マルシェ、世界遺産クイズラリー、音楽ステージ、大声コンテストが予定されています。

注意したいのは足です。稲渕棚田の周辺に駐車場はありません。この二日間だけ、近鉄飛鳥駅と石舞台から会場直行のシャトルバスが運行されます(ダイヤは村の案内で確認してください)。

主催はNPO法人明日香の未来を創る会、協賛は一般財団法人明日香村地域振興公社です。

31回続くということ

案山子は、もともと田を守るための道具です。その案山子を並べて人を呼び、地元の野菜や模擬店で棚田の活動を支える。ポスターの末尾には、こうありました。

「みんなで食べて、棚田の活動を応援しよう!」

31回続いたということは、31回分の稲刈りがこの斜面で続いてきたということでもあります。「クスッ」の向こう側にあるのは、たぶんそういう話です。

案山子が立っているのは農地のなかです。畦に入らず、道から見てください。

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