飛鳥の明日香の里を(明日香村)/コラム/村の暮らし

稲渕の棚田には、毎年秋になると見上げるほど大きな案山子が立ちます。題材はその年の話題から選ばれ、二度と同じものは立ちません。

古墳と宮跡ばかり見て歩くと気づきませんが、この村の冬はビニールハウスの季節です。奈良で生まれた大粒のいちごが、そのなかで実っています。

2月の第1日曜、飛鳥坐神社の境内が人で埋まります。天狗が参拝者の尻を叩き、田を耕し、最後は夫婦の営みまで演じてみせる祭りです。

1972年に高松塚古墳の壁画を掘り当てたのは、関西大学の調査隊でした。その三年後に村で始まった公開講座は、いまも続いています。

村の境を越えると、景色がはっきり変わります。飛鳥の風景が残っているのは偶然ではなく、この村だけを対象にした法律があるからです。

田の縁に沿って、定規で引いたようにまっすぐ並ぶ赤。自然に生えたものではありません。人が球根を運んで置いたものです。

飛鳥川に、稲藁の綱が二本架かっています。下流の稲渕は神主を招き、上流の栢森は僧侶が読経する。同じ行事が、集落ごとに違うかたちのまま続いています。